2020年、日本糖尿病学会は炭水化物について何と言っているのか

糖質を代表する砂糖

こんにちは。

先日、日本糖尿病学会より糖尿病患者に対するエネルギー・炭水化物・タンパク質摂取量と栄養食事指導のコンセンサスステートメントが発表されました。(糖尿病 63巻 3号(2020))

コンセンサスステートメントとは、専門家集団が最先端の科学的根拠を元に作成する合意声明です。

つまり「現時点ではこれがよさそうです」と専門家が言っているわけです。

今回は上記の糖尿病患者の栄養食事指導の中で、炭水化物(糖質)について何と言っているのかをご説明いたします。

目次

炭水化物摂取量は柔軟に対処する必要がある

炭水化物摂取量については『全ての人に共通して当てはまる摂取量はわからないので、個々の状態に合わせて決めてね』と記載してあります。

もちろん学会ではきちんとした日本語を使用していますので下記に引用します。

糖尿病の予防・管理のための望ましいエネルギー産生栄養素摂取比率について,これを設定する明確なエビデンスはないため,身体活動量,併発症の状態,年齢,嗜好性などに応じて個別化をはかり,適宜柔軟に対処する必要がある

糖尿病 63巻 3号(2020)

最終的には人それぞれということになるものの、それでは話が進まないですし、人によっては炭水化物の総カロリーに対する摂取量比率が0%や100%でもいいのかというとそういうわけにもいきません。

あくまで適切な炭水化物摂取量を決定づける科学的根拠が今の時点では見当たらないというだけの話です。

ということで、現時点では「日本糖尿病学会の食事療法に関する提言」(2013)21)で言われている、炭水化物 50~60%エネルギー(150 g/日以上)を目安にしておきましょうとまとめています。

うーん、今までと何ら変わりなく2020年も極普通のことを言っていますね。

ちなみに糖質摂取量と死亡に関して、かの有名なLancetに掲載された論文では、糖質摂取量が50~55%の摂取で全死亡率が最も低いと指摘されており、432,179人のメタアナリシスで糖質摂取率と死亡率の関係をみると、40%未満の低糖質食と70%以上の高糖質食で死亡率が上昇したとされています。

さらに低糖質食群では糖質を減らす代わりに動物性食品を摂取することが死亡リスクにつながるとされています。

焼き肉、ステーキ、チーズなどを好きなだけ食べまくるのはリスクが高かったといっているのですね。

Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis

では次に、一時期流行った?糖質制限については日本糖尿病学会2020年コンセンサスステーメントでは何と言っているでしょうか。

要約すると、肥満かつ非高齢の糖尿病患者(妊婦、授乳婦、食行動異常者、腎機能異常者などを除く)であれば半年間の軽度糖質制限食(130-150g/日)は肥満の解消やHb1Acの改善には有用性があるものの、長期効果や長期安全性については不明である。

そのため糖質制限食は開始前に適した患者を慎重に判断して、治療を受ける際のメリット・デメリットをしっかり患者に理解してもらってから始めること。となっています。

まぁ治療についてはメリット・デメリットを考えるということで、当たり前といえば当たり前ですね。

糖質制限食については何故だか一般書籍などがたくさん出ていますが、メリットの強調が強くデメリットにはあまり光を当てていない印象があります。

糖質制限食を始めた方はデメリットも理解しているのかが気になります。

糖質制限食は別の機会に触れることとして、2020年も炭水化物については今のところ目新しいことはなく、今まで通りの食事指導となりますね。

ちなみにU.S. News & World Reportでは毎年Best Diet Rankingが発表されているのですが、糖尿病食部門全35食において第1位は地中海食でした。

Low-carbohydrate dietという項目はなく、糖質制限に当てはまるケトン食は24位、Atkins Dietは28位でした。  

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