脂肪の過剰摂取は短期間で血糖を悪化させる

アイスクリーをム食べる人

こんにちは。

前回は糖質はカロリーオーバーしても簡単に体脂肪にならないが、脂質はカロリーオーバーした分だけ体脂肪になるというお話をしました。

今回は脂質の過剰摂取は短期間で血糖コントロールを悪化させるというお話です。

この研究では9人の健康で肥満ではない男女に1週間、高脂質による高エネルギー食を摂取してもらって血糖やGIPなどの消化管ホルモンがどうなったかを調べています。

対象者の平均は年齢23歳、身長171.6cm、体重65.6kg、BMI 22.3でした。

1日の推定必要エネルギーは約2,500kcalと予測されたため、エネルギーは50%上乗せの約3,800kcalを摂取してもらい、そのうち65%を脂質で摂取しています。

炭水化物は22%(約211g)、タンパク質は約13%となっています。

結果は体重が+0.7kgとなり、空腹時血糖は99mg/dlから104.4mg/dlに上がりました。

また空腹時のインスリン濃度とGIP濃度も上昇しました。

一方で、空腹時の遊離脂肪酸と中性脂肪は低下しました。

高脂質食前後で一定の食事を摂取してもらい食後血糖などがどうなるかを調査した結果では、高脂質を7日間摂取した後では、それ以前と比較して食後血糖と食後インスリン濃度の上昇が確認されました。

論文では短期間でも脂質負荷がインスリン感受性を低下させており、そのためにGIPが上昇したのだろうと言っています。

空腹時の遊離脂肪酸と中性脂肪の低下については、食事性の脂質が多いため、血中の脂質をより脂肪細胞に取り込み、かつ脂肪細胞からの分解が低下したのだろうと言っています。

脂質過剰おそるべしです。

とはいえ、この論文の結果を見て「インスリン感受性低下はカロリーオーバーで太ったのだからであって、脂質じゃなくても太ってしまえば一緒なんじゃないの?」と思った方もいると思います。

鋭いですね。

そのような人のために高炭水化物群と高脂質群でのインスリン感受性応答を細胞レベルで調べてみたよという論文をご紹介します。

20-45歳の非肥満で健康的な男女21人による研究です。

まず5日間は標準的な食事(脂質30%、炭水化物50%、タンパク質20%)を摂取してもらった後に、摂取カロリーを40%上乗せし、その時のエネルギー栄養バランスを高炭水化物(脂質20%、炭水化物60%)と高脂質(脂質50%、炭水化物30%)に分けています。

結果として全体的なインスリン感受性には両食事で差がありませんでしたが、骨格筋のインスリン伝達系には違いが見られました。

何が起きていたかというと、高炭水化物摂取の骨格筋内ではインスリン受容体基質(IRS)-1のチロシンリン酸化の上昇と、ホスファチジルイノシトール3(PI3)キナーゼの活性化が見られ、高脂質摂取ではIRS-1のセリンリン酸化の上昇とp85αの上昇が見られたのです。

なんのこっちゃ?となりますが、インスリン抵抗性をきたしている方はPI3の活性化が低下していることがわかっています。

そしてPI3活性化の低下はIRS-1のセリンリン酸化によって引き起こされます。

またp85αはPI3の活性を低下させます。

つまり、高炭水化物摂取ではPI3の活性化が高まりインスリン感受性も高まる方向に向かっていた一方で、高脂質摂取ではIRS-1のセリンリン酸化とp85αの増加などからインスリン感受性は低下する方向に向かっていたということです。

ということで、高脂質摂取を続けるとわずか5日間でも細胞レベルではインスリン抵抗性を引き起こす反応が起きていました

もちろん身体はそんなことを教えてくれませんから、それに気づかない人は同様の食事を継続し続けます。

その結果、インスリン抵抗性⇒インスリン分泌低下となり、晴れて糖尿病(2型)発症となるわけですね。

カロリーオーバーによる体重増加もそうですが、それが脂質によって引き起こされるということは糖尿病まっしぐらということなので、脂質によるオーバーカロリーはぜひとも避けるように気をつけましょう。

ではでは。

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