睡眠不足は短期間で取り戻すことができるのか?

睡眠不足

睡眠は十分とった方がいいだろうことは周知の通りだと思います。

一方で、睡眠不足になってしまうことも現在ではよくあることです。

それでは睡眠不足になってしまった場合、その後の睡眠時間を増やすことで「睡眠不足の影響を取り戻す」ことはできるのでしょうか?

睡眠不足が続くと、体は疲労し、イライラを感じ、脳の機能も低下します。

一般的に、私たちが眠くなる主な原因は、アデノシンという物質が蓄積することによるものとされます。アデノシン説によれば、睡眠負債(睡眠不足による脳内のアデノシンの過剰)は、良い睡眠を取ることで返済される可能性があると言われています。

しかし、最近の研究によると、これが必ずしも正しいとはいえないかもしれないようです。

研究によれば長期間の睡眠不足は酸化ストレスや炎症の増加による脳の損傷を引き起こす可能性があるとされます。

この論文では、睡眠喪失後の神経行動回復には時間がかかり、場合によって回復は不完全である可能性があるとのことです。

上記の研究は動物モデルであり、ヒトにおいても同様のメカニズムが働くかどうかはまだ明確ではありませんが、睡眠不足はよくないだろうとみなさん直感でもわかる通り、睡眠不足は避けたいところです。

次に、ヒトにおける睡眠不足は脳機能にどのような影響を与えるのかをみてみましょう。

研究によれば、睡眠不足が5~10日続くと認知力が低下し、3日以上十分な睡眠を取った後でも完全に回復しないことが示されています。

上記の論文では9人の健康な男性(23-28歳)を対象に睡眠制限を行った後、脳機能の回復までの期間を調査しています。研究参加者は1-2日の睡眠は23:00-07:00時とされ、その後の5日間は睡眠時間を03:00-07:00時に制限されました。そして7日間の回復日(睡眠時間23:00-07:00時)を取って脳の反応を調べています。

結果は、7日間の回復日により参加者は眠気は改善したものの脳機能テストの一部においては基準値に戻りませんでした。

つまり、眠気がなくなったとしても脳機能は完全に回復していなかったとのことです。

さらに、ヒトにおける慢性的な睡眠不足と脳機能を評価した別の研究があります。

この研究は、健康な成人を対象に、4日間の通常生活を送った後に10日間の持続的な睡眠制限(個人の睡眠必要量に対して30%減)を行い、その後の7日間は回復にあてるという21日間連続で自然条件下で行った前例のない研究とされています。

結果として、睡眠を制限している間の脳機能はすべての指標で悪化が観察されています。さらに、10日間の睡眠制限後の7日間の回復では完全な回復には不十分であることも示されました。

これらの結果からは、長期間の睡眠不足は脳に持続的な悪影響を及ぼすかもしれず、数日間の良質な睡眠では睡眠負債を完全には返済できない恐れがあるといえますね。

現代社会では睡眠不足はつきものですが、連続して睡眠不足に陥らないように可能な限り対策をしたいところです。

食事や運動の効果を高めるためにも睡眠にも十分な意識を向けていきましょう。

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