こんにちは。
今回は糖尿病ネットワークを見ていたら『1型糖尿病の発症を腸内細菌が抑制 腸内環境が自己免疫疾患に大きく関わっている』という記事を見つけたので、少々調べてみたというお話です。
糖尿病ネットワークの記事では理化学研究所 統合生命医科学研究センター 粘膜システム研究チームのプレスリリースを紹介していて、プレスリリースの日本語タイトルは寄生虫が自己免疫疾患の発症を抑える仕組みを解明となっていました。
原著論文はCD8+ regulatory T cells are critical in prevention of autoimmune-mediated diabetesになります。
さて論文を読んでみると腸管寄生線虫のHeligmosomoides polygyrusが寄生していることにより1型糖尿病の発症が抑制されたとのことです。
どうしてHeligmosomoides polygyrusの寄生が1型糖尿病の発症を抑制するのでしょうか。
論文では「色々調べてみると寄生虫がトレハロースという二糖類を分泌していて、トレハロースがRuminococcus属の腸内細菌の餌となって増殖を促し、その結果CD8Tregが誘導されて膵臓の細胞の破壊が食い止められる」と言っています(筆者意訳)。
ちなみにトレハロースはきのこ類やパン酵母、ビール酵母などに含まれている二糖類です。
この論文を読み進めていくうちに、寄生虫がいなくてもトレハロースを摂取すればいいんでないの?と思ったのでトレハロースについて調べてみると、トレハロースを経口摂取したらこんなことが起きたよという文献がでてきました。
まずは上述のCD8+ regulatory T cells are critical in prevention of autoimmune-mediated diabetesによると、ストレプトゾトシン(STZ)を投与して膵β細胞のインスリン産生機能を失わせたマウスに、トレハロースを経口投与していると血糖上昇が有意に抑制されたとのことです。(寄生虫がトレハロースを分泌している場合に比べて血糖上昇抑制程度は低かったとのこと)
さらにDaily Intake of Trehalose Is Effective in the Prevention of Lifestyle-Related Diseases in Individuals with Risk Factors for Metabolic Syndrome(毎日のトレハロース摂取はメタボリックシンドロームの危険因子を持つ人の生活習慣病の予防に効果的である:筆者意訳)という論文もありました。
この論文の面白いところは、健康とはされているもののBMI≧23かつメタボリスクがありそうな人を対象としている点です。
具体的にはBMI≧23以上かつ、①空腹時血糖100-125mg/dl、②HOMA-IR(インスリン抵抗性指標で1.6以下が正常)≧1.7、③体脂肪率 男性≧23%、女性≧35%、④体幹脂肪率 男性≧23.8%、女性≧33%の①~④のうち1項目以上を満たす人が対象となっています。
そもそも耐糖能異常リスクがありそうな人を集めてトレハロース経口摂取群17人とスクロース(ショ糖、いわゆる砂糖)経口摂取群17人に分けて、耐糖能なんかがどうなったかを調べています。(被検者はトレハロースとスクロースのどちらを摂取しているかはわからないようにしています)
いずれの群も12週間、トレハロースまたはスクロースを10g/日を摂取し、通常の食事と運動は研究開始前と変えないように指示され、日々の生活状況に変化がないかチェックシートで評価されています。
12週間後の結果がどうだったというと、OGTTによる負荷2時間後血糖値はトレハロース群で121.1±27.6mg/dlから102.2±22.6mg/dlに有意に低下したとのことです。(スクロース群では118.7±30.6mg/dlから116.3±31.9mg/dlと変化なし)
ということでスクロースを摂取するよりはトレハロースを摂取した方が血糖低下にはよさそうということでした。
人によってはトレハロースを分解するトレハラーゼ活性が十分ではないため、一度に多く摂取すると下痢などになるかもしれないので、1回3-4gくらいの1日3回摂取くらいでお腹の調子をみてみるというのがよさそうです。
ちなみにトレハロースは日本国産品の800g入りでアマゾン価格563円(+郵送代)となっています。
まぁ決して糖尿病が治るというわけではないですし2型糖尿病についてのデータではないのであくまで参考までにですね。
それでは。