こんにちは。
今回はイギリスの食事ガイドラインを見てみようというお話です。
なぜイギリスかというと、International Diabetes Federation(国際糖尿病連合)のデータによると糖尿病の有病率が最も低そうな国だからです。
低そう、というのはデータのない国もあるからですね。
IDFのデータでは20-79歳の糖尿病有病率が公表されていますが、2019年のイギリスでは糖尿病患者は約268万人で有病率は3.9%となっています。
実は世界を見回すと有病率がもっと低い国は23か国くらいあって、最も有病率が低い国はアフリカ大陸にあるベナン共和国で、糖尿病患者約4万5千人の1.0%です。
ではなぜベナン特集にしないのかというと、IDFでは糖尿病と診断されていないであろう糖尿病患者の割合のデータも公表しているのですが、そのデータによるとベナンの糖尿病と診断されていない有病率は68.2%となっていたのです。
診断されていない人の有病率がどこまで正確かはわかりませんが、データが正しいとすると真の糖尿病の有病率はとても高くなりますね。
一方で、イギリスでは糖尿病と診断されていない有病率は18.5%でした。
糖尿病と診断されていない有病率が一番低いのはハンガリーで16.7%、次がクウェートで16.8%となっていて、その次がイギリスなのです。
ハンガリーの糖尿病と診断されている有病率は6.9%、クウェートは12.2%なので、糖尿病と診断されている有病率と診断されていない有病率の両方が最も低いのはイギリスということになります。
というわけで、イギリスが最も糖尿病が少ない国として、イギリスの健康的な食事ガイドラインの内容を調査してみました。
Eatwell Guide
さて前置きが長くなったところで、イギリスの食事ガイドラインを見てみます。
これは一般的に健康的な食事ということであり、糖尿病治療食としてのガイドラインではありません。
とはいえ、健康的な食事というのは糖尿病の方にとっても健康的なはずです。(腎障害などの合併症がある方は除く)
イギリスではEatwell Guideとして公表されています。
ポイントは以下の図にまとめられています。
Eatwell Guideでは7つのメッセージが述べられています。
1. さまざまな果物や野菜を1日に5つ以上食べる。
2. ジャガイモ、パン、米、パスタ、その他のデンプン質の炭水化物をベースにした食事を摂る。
3. いくらかの乳製品または乳製品の代替品(大豆飲料やヨーグルトなど)を摂る。可能であれば低脂肪、低糖質のものを選択する。
4. 豆、魚、卵、肉、その他のタンパク質を食べる。
5. 不飽和油とスプレッドを少量で食べる。
6. 脂肪、塩、砂糖を多く含む食品は控えて食べるときは少量にする。
7. 1日6〜8杯の水を飲む。
どこでも聞くような内容かと感じるのは私だけでしょうか。
では各メッセージを少し突っ込んでおきます。
1. さまざまな果物や野菜を1日に5つ以上食べる
ガイドラインによると、ほとんどの人は十分な果物や野菜を食べていないため、果物や野菜を毎日食べる食べ物の3分の1以上にすべきとのことです。
そして毎日、さまざまな果物と野菜の少なくとも5種類を食べるようしようとのことです。
果物と野菜は80gの摂取で1種類食べたとカウントしてよいようです。
無糖の100%フルーツジュース、野菜ジュースとスムージーは果物や野菜の1種類にカウントしてよいと言っています。
ただし1日に合計150mlに制限する必要があり、フルーツジュースと野菜ジュースを飲んだとしてもカウントできるのは1種類までで、残りの4種類は食品を食べろと言っています。
果物と野菜はビタミン、ミネラル、食物繊維の良い供給源なので、しっかり摂取しましょうとのこと。
2. ジャガイモ、パン、米、パスタ、その他のデンプン質の炭水化物をベースにした食事を摂る。
炭水化物の摂取についてです。
でんぷん質の食品を1日に食べる食品の3分の1程度食べるように言っています。
特に食物繊維について触れていて、全粒粉パスタや玄米など、繊維質の高い全粒種の摂取が望ましく、ジャガイモの場合はできれば皮も摂取するとい良いと言っています。
パンとパスタもより繊維の高いものの摂取を検討しましょうとのこと。
でんぷん質の食品は優れたエネルギー源でもあるよと言っています。
この項目は詳細が別ページに記載してあって、そのページの内容をざっくりまとめます。
— 以下、ざっくりまとめ —
でんぷん質の食品は私たちの炭水化物の主な供給源であり、健康的な食事に重要な役割を果たしています。
でんぷん質の食品は、健康的でバランスの取れた食事の一環として毎日食べる必要があります。
なぜでんぷん質の食品が必要でしょうか?
でんぷん質の食品は優れたエネルギー源であり、繊維、カルシウム、鉄およびBビタミンも含んでいます。
でんぷん質のある食品は脂質が多いと思っている人もいますが、1g当たりのカロリーは脂質の半分以下です。
調理して提供するときに使用する追加の脂肪に注意しましょう。追加の脂肪によってカロリー量が増加してしまいます。
でんぷん質の食品と繊維
繊維は、野菜、果物、豆類、穀物の細胞壁にあるさまざまな物質のことで、消化できない繊維は、他の食品や老廃物が腸を通過するのを助けます。
ジャガイモの皮、全粒パンと朝食用シリアル、玄米、全粒粉パスタはすべて、繊維の優れた供給源になります。
繊維は腸を健康に保つのに役立ち、満腹感を与えるのに役立ちます。
つまり、食べ過ぎる可能性が低くなります。
リンゴやニンジン、ジャガイモなどの果物や野菜、オート麦や豆類に含まれる一部の種類の繊維は部分的に消化され、血液中のコレステロール量を減らすのに役立ちます。
でんぷん質の多い食品を食べるためのヒント
これらのヒントは、あなたの食事のでんぷん質の食品の量を増やすのに役立ちます。
朝ごはん
- 全粒穀物を選ぶか、お気に入りの健康的な朝食用シリアルと混ぜてください。
- フルーツ入りのプレーンなポリッジが、冬の温かい朝食になります。
- 全粒オート麦と果物、低脂肪、低糖ヨーグルトは、おいしい夏の朝食になります。
昼食と夕食
- ランチにベイクドポテトを試してみてください。皮を食べて繊維を増やしましょう。
- チップやフライドポテトの代わりにオーブンで焼いたポテトウェッジを作ってみてください。
- 米またはパスタを増やしソースを減らします。ただし、野菜を摂取してください。
- 種子、全粒粉、穀倉などのパンを試してください。全粒品種を選ぶと繊維の量も増えます。
- 玄米を試してみてください。
でんぷん質食品の種類
1. ポテト
ジャガイモはでんぷん質の高い食品であり、エネルギー、繊維、ビタミンB、カリウムなどの優れた供給源です。
ジャガイモは野菜ですが主に食事のデンプン食品として食べられており、食事の炭水化物の良い供給源になります。
ジャガイモは少量の油を使用し塩を添加しないで、茹でたり、焼いたり、つぶしたり、ローストしたりすると健康的です。
フライドポテトは健康的ではありません。
ジャガイモを調理または提供するときは、低脂肪または多価不飽和スプレッド、またはオリーブ油やひまわり油などの少量の不飽和脂肪を選びます。
繊維とビタミンをより多く保つために、可能であればジャガイモの皮をそのままにしておきます。例えば、ジャガイモをゆでたり焼いたりしたら皮も食べます。
2. パン
全粒粉のパンはエネルギーの他に、ビタミンB、ビタミンE、繊維、ミネラルを含んでいます。
白パンにもさまざまなビタミンやミネラルが含まれていますが、全粒粉のパンよりも繊維が少なくなっています。
小麦アレルギーまたは不耐症があると心配な場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
3. シリアル製品
シリアル製品は穀物から作られています。全粒穀物は、鉄、繊維、ビタミンBやタンパク質の毎日の摂取に役立ちます。
小麦、オート麦、大麦、ライ麦、米は全粒穀物として食べることができるシリアルです。
これは、オート麦やオートミールで構成されるシリアル製品、全粒粉製品が健康的な朝食になりうることを意味します。
精製されたシリアル製品は全粒粉の含有量は低くなっていて、それらは塩分や砂糖が豊富になっている場合があるため注意が必要です。
シリアルを購入するときには食品ラベルをチェックして、さまざまな製品を比較しましょう。
4. 米と穀物
米と穀物は、脂肪の少ない優れたエネルギー源です。
炊飯した米や穀物を保存および再加熱する際に注意すべき点がいくつかあります。
炊いた米や穀物を室温で放置すると、胞子が発芽することがあります。
菌は増殖して毒素を作り出します。食品を再加熱してもこれらの毒素は取り除かれません。
したがって、米と穀物は調理したらされたらすぐに提供するのが最善です。これが不可能な場合は、調理後1時間以内に冷やして再加熱するか、サラダなどのレシピで使用するまで冷蔵してください。
室温で一晩放置された米や穀物は捨てる勇気が必要です。
5. パスタ
パスタはデュラム小麦と水で作られた生地で構成され、鉄分とビタミンBが含まれています。
全粒粉パスタは繊維が多く含まれているため、通常のパスタよりも健康的です。
全粒食品は精製された穀物よりもゆっくりと消化されるため、満腹感を長く感じることができます。
6. でんぷん質食品中のアクリルアミド
アクリルアミドは多くの食品、特にジャガイモやパンなどのでんぷん質の食品が高温で長時間調理されるときに作成される化学物質です。
アクリルアミドが癌を引き起こす恐れがあるため、以下のようにアクリルアミドのリスクを軽減することを心がけましょう。
- 黄金色にしよう:ジャガイモ、根菜、パンなどのデンプン質の食品を焼く、トーストする、ローストする、または揚げるときは、黄金色またはそれより明るい色を目指します。
- パックを確認しましょう:チップ、ローストポテト、パースニップなどのパッケージ化された食品を揚げたりオーブンで加熱したりするときは必ず調理手順に従いましょう。製品を正しく調理して、澱粉質の食品を長時間または高すぎる温度で調理しないようにしましょう。
- 多様でバランスの取れた食事を摂る:食品中のアクリルアミドのようなリスクを完全に回避することはできませんが、多様でバランスの取れた食事は癌のリスクを減らします。
- 生のジャガイモを冷蔵庫に保管しないでください:生のジャガイモを冷蔵庫に保管するとアクリルアミド全体のレベルが上昇する可能性があります。生のジャガイモは、理想的には6C以上の温度で暗くて涼しい場所に保管する必要があります
炭水化物の項目だけ妙に突っ込んでしまいましたが、健康的な食事にはやはり適切に炭水化物を摂取することが推奨されていますね。
3. いくらかの乳製品または乳製品の代替品(大豆飲料やヨーグルトなど)を摂る。可能であれば低脂肪、低糖質のものを選択する
牛乳、チーズ、ヨーグルトは、たんぱく質やビタミンの優れた供給源です。
また、骨を強く保つのに役立つ重要なカルシウムの供給源でもあります。
可能な場合は1%脂肪の牛乳、減脂肪チーズ、プレーンな低脂肪ヨーグルトなど、低脂肪で低糖の製品を選ぶようにしましょう。
4. 豆、魚、卵、肉、その他のタンパク質を食べる。
豆、豆類、魚、卵、肉は、タンパク質、ビタミン、ミネラルの優れた供給源です。
エンドウ豆、レンズ豆などの豆類は、脂肪が少なく、繊維やタンパク質も多いため、肉に代わる優れた食品です。
肉はベーコン、ハム、ソーセージのような赤く加工された肉をあまり食べないようにしましょう。
毎週少なくとも2尾の魚を食べましょう。そのうちの1尾はサケやサバなどの脂質のある魚を食べましょう。
5. 不飽和油とスプレッドを少量で食べる
不飽和脂肪はより健康的な脂肪であり、植物油、菜種油、オリーブ油、ひまわり油があります。
すべてのタイプの脂肪はエネルギーが高く、摂取量は控えめにする必要があることを念頭におきましょう。
6. 脂肪、塩、砂糖を多く含む食品は控えて食べるときは少量にする
脂肪、塩、砂糖を多く含む食品には、チョコレート、ケーキ、ビスケット、甘いソフトドリンク、バター、アイスクリームが含まれます。
食事療法では必要とされない食べ物であり、これらの摂取はより少ない頻度でそしてより少ない量にすべきです。
7. 1日6〜8杯の水を飲む
水、低脂肪の牛乳、お茶やコーヒーなどの低糖または無糖飲料もすべて水分として考えられます。
フルーツジュースやスムージーも水分摂取量に含まれますが、糖が含まれているため、これらの飲み物は1日に150mlに制限しましょう。
まとめ
炭水化物的なところを妙に突っ込んでしまったので、他の項目についてはかなり簡単になりました。
とはいえ、いわゆる健康的な食事としてはどこでも見かけるような内容ですので、あまり細かく解説することもない感じです。
結局は、
1. 果物と野菜をしっかり食べて、
2. 砂糖や加工食品、脂質は控えめにして炭水化物は全粒が望ましく、
3. 植物性や魚のタンパク質を摂る。
ということではありますね。
これって米国糖尿病学会の推奨とほぼ同じです。
イギリスの食事ガイドラインでは、ある程度の乳製品(低脂質、低糖質のものが望ましい)の摂取や水分摂取についても触れていますが、まぁそうなのかなといったところですね。
少なくとも糖尿病が最も少ない国イギリスでも、健康な人が炭水化物制限&高脂質食にするようなことは推奨されていませんでした。
健康的な食事として独自路線のガイドライン(脂質を多く食べようとか)の国はあるのでしょうか。
暇があれば探してみることにします。