インスリン感受性を高めるためのファスティング

あなたが最後に24時間のファスティング(断食)を行ったのはいつですか?

おそらく、ほとんどの人が「していない」のではないでしょうか。

なぜなら多くの人は「お腹が空くので24時の断食なんてできない」「断食は身体に悪いと思った」「1日3食を食べるのが大切だと思う」などと考えるからです。

しかし、これらの考えは正しいとはいえません。

ファスティングによって自然に摂取カロリーが減りますが、それによる利点があることは判明しています。

摂取カロリーが減少することによって脂肪の酸化が劇的に増加します。

脂肪の酸化とは脂肪を燃焼することなので、つまりは体脂肪が減少します。

適切なファスティングを行って摂取カロリーをコントロールすることは、寿命を延ばし、肥満、2型糖尿病などの多くの慢性疾患の発症を予防する効果的な方法の1つです。

さらに、減量、空腹時・食後血糖の減少、インスリン必要量の減少、酸化ストレスの減少、ミトコンドリア機能の増加など、糖代謝のすべての側面を改善する最も強力な方法の1つでもあります。

計画的にファスティングを実行すると、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を超える状態(負のカロリーバランス)を作ることができます。

負のカロリーバランスは、筋肉と肝臓が身体に貯蔵されたブドウ糖と脂肪酸を燃焼する反応に繋がります。

この反応が良い利点は2つあります。

第1に、筋肉や肝臓の内部に蓄積された余分な脂肪を酸化することは、インスリン作用を高める強力な方法です。

過剰な脂肪酸が筋肉や肝臓に与える負担が減少すると、インスリン感受性が高まります。

第2に、筋肉と肝臓が負のカロリーバランスになると、過剰な脂肪酸だけでなく、過剰なグリコーゲン(貯蔵されているブドウ糖のこと)も燃焼します。

グリコーゲンが燃焼されて貯蔵量が減ることは、筋肉と肝臓が新たに血糖をグリコーゲンとして吸収できる容量が増えることを意味します。

つまり血糖値を下げることができるようになります。

負のカロリーバランスはまた、血圧を下げることにもつながります。

カロリー制限が血管内皮細胞の機能を改善し、血管を拡張させる一酸化窒素(NO)の合成が高まることが知られています。

また、NO合成の増加に加えて、負のカロリーバランスにより心臓血管の炎症が減少し組織への血流が増加します。


体重の減少、炎症性サイトカインの減少、酸化ストレスの減少、DNA修復プロセスの改善、および細胞複製率の低下などにより、カロリー制限が癌の発生率を低下させると考えられています。

カリフォルニア大学バークレー校の研究では、負のカロリーバランスが全体的な細胞増殖率を低下させることが示されました。

過体重になると細胞増殖率が高まり多くの癌の発生リスクが劇的に高まるので、負のカロリーバランスから自然に発生する減量は、癌を予防および回復させる最も強力な方法の1つとなります。


それでは、最適な結果を得るために断続的な断食をどのように行うとよいのでしょうか?


この時点で、あなたはこう考えているかもしれません。

「断続的な断食の利点はわかったけど、食べない生活は考えられない!」

確かに現実的には、毎日のカロリー制限は容易ではないことが予想されます。

また、継続的なカロリー制限は、日常生活に肉体的、精神的な制限を課す可能性があるだけでなく、長期的な継続ができる方は限定されます。


この問題を解決するために、多くの研究グループがカロリー制限の代謝効果を期待できる生活スタイルに優しい戦略を開発しました。


断続的な断食療法にはさまざまな取り組み方がありますが、次の方法をお勧めいたします。


1つ目の方法は、週に1回、24時間の断食を行います。

2つ目の方法は、毎日16時間は何も食べず、8時間の間に食事をします。


インスリン注射や経口薬を使用している場合は、断食の間のインスリンや内服をどのように調節するかを、主治医に確認するところから始めてください。

低血糖を回避し、安全に断食を始めることが必要です。


さあ、間欠的断食を生活に組み込む時が来ました。

食べないのは少し不安かもしれませんが、一度やってみるとその効果に夢中になってしまうかもしれません。


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